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ワイン会の続き
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昨日の続きです。
次のワインはカノン・フロンサックのシャトー・カノン・ド・ブレム1990年。これは僕が今回一番飲みたかったワインです。
あまり一般的に知られていませんがカノン・フロンサックは実はとても評価の高い地域で、サンテミリヨンのコート地区の高地の斜面と土壌がとても似ていて硬質な粘土石灰土壌です。ただサンテミリヨンと異なるのは気候がドルドーニュ河に面しているために海洋性で湿度が高く気温変化が緩慢だということです。そのため構造が緻密で、豊かな果実味があるのはサンテミリヨンと同じですが、こちらのほうがよりエレガントな味わいです。
そして90年は1900年代でも記録に残るほど素晴らしいヴィンテージで、このワインも長熟なタイプなので、まさに飲みごろに入ったばかりの素晴らしい状態だと思います。
飲んでみると香りはすぐに驚くほど複雑な芳香を放ち、熟成にもよりますが柔らかなタンニンと綺麗な果実味の、ふんわりとしたソフトで緻密な味わいでした。
やはり期待した通りで、今まで飲んできた全てのワインの中で一番僕好みの味わいと言い切れると思います。

フロンサックはシャルルマーニュ大帝が砦を築いたところで、今でも中世の古い城砦が数多く残っているそうす。そのころのワインは非常に評価が高く、17世紀にはリシュリュー枢機卿が土地を購入し、出来たワインをヴェルサイユ宮殿に持ち込んでいたという話で、18世紀まではボルドー右岸で最も高価で取引されていたそうです。
今でこそサンテミリヨンやポムロルの方が圧倒的に評価が上ですが、中世のロココ調のような緻密で繊細な古典的上品さを持ったカノン・フロンサックのワインは、再評価されるべきワインだと思います。
人気のないおかげで安く手に入れることが出来、僕自身はラッキーだと思っています。
本当に素晴らしいワインでした。
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最後のワインはサンテミリヨンのシャトー・スータール1999年。
特に長期熟成型が多いサンテミリヨン地区ですが、このワインは初めから20年は瓶熟させないと美味しさが表れてこないような造りをしています。今では珍しい伝統的で長命な辛抱強く待たなければならない頑固なワインは、すぐ美味しかがわからないと評価されない現代においては、かなり変わった存在かもしれません。
飲んでみるとやはり早すぎるのか、香りも湿った石のようで完全に閉じていて最後まで変化しませんでした。味わいも果実味のフーティーさを完全に閉じ込めたような味で、薬を飲んでいるようでした。開けるのが大分早かったようです。
なぜあえてこのような造りをするのか疑問に思う方も多いようですが、僕はとても共感を覚えます。
飲みごろになるまでじっくりと待てる人だけが、最後に見せる微笑みを覗くことができるようなワイン。僕は素敵だと思います。

色々な表情を見せるワイン。まるで古い小説を読んでいるようです。
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|09:58:47|ワイン | comment(0) | trackback(1)