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ジュブレイ・シャンベルタン・アン・シャン2010 ドメーヌ・ドニ・モルテ
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ジャドのボンヌ・マールの次の日に、これも残りを頂いたジュブレイ・シャンベルタン・アン・シャン2010 ドメーヌ・ドニ・モルテ。
ボンヌ・マールがグラン・クリュ(特級)でこちらは村名クラスと比較するのは間違っているのかもしれませんが、このワインも近年非常に評価が高く、ボンヌ・マールの3分の1程度ですが価格も高価なので、造りの違いとして興味深いので比較してみました。

1993年、ドニ・モルテ氏が父、シャルル・モルテ氏から畑を受け継ぎ、誕生したのが「ドメーヌ・ドニ・モルテ」。
「ブルゴーニュの天才」と高く評価され、一躍トップの造り手たちの仲間入りを果たします。 「ル・クラスマン」では、ロマネ・コンティ、ルロワと並び、3つ星生産者の常連として名を連ね、 後のブルゴーニュワインの一角を担う存在として期待されてきました。
しかし2006年、ドメーヌ・ドニ・モルテは、ドニ氏の突然の死去という不幸に見舞われます。
天才と言われた彼の死は、ブルゴーニュのワイン関係者や愛好家に大きな衝撃を与えましたが、当時はまだ20代後半だった息子のアルノー氏がドメーヌを受け継ぎました。
彼は1997年からドメーヌを手伝い始め、その後もメオ=カミュゼやルフレーヴ、 さらにオーストラリアなどで研修を積んでおり、その実力は偉大なる父を超える程とも言われています。
現在は、母ローランス女史、祖父シャルル氏と共に、丁寧な畑仕事で化学肥料などは用いない有機栽培など、シャルル氏の代から受け継がれる、独自のこだわりを持ったワイン造りを行っているようです。

アンシャンの畑はジュヴレ村の北側、フィサン村に接し、すぐ隣が人気の一級畑シャンポーという好立地。
石灰石がごろごろと転がる緩やかな斜面。樹齢は約70年の古木で、村名区画ながら1級に匹敵するポテンシャルという評価を受けています。
スタンダードなジュヴレは40%の新樽であるのに対しアンシャンは60%。充実した果実味があるようです。
「あまり強すぎるワインよりも、ブドウのポテンシャルを最大限に引き出しつつ、エレガントでテロワールに忠実なワインを造りたい」とアルノー氏が言うように、ブドウの良さがきちんと表現された、繊細かつ優雅で凝縮感に溢れると一般に評価されるワインは、年々評価が上がるばかりで、父・ドニ氏が亡き後も、ジュヴレ・シャンベルタンのスターとしての名声と地位を維持し続けており、常に品薄状態が続いていて、価格も年々うなぎ上りの状況です。

実際のワインは、村名ワインとしては粘性も凝縮感もある程度しっかりしていて、少し若いですが香りは充分開いていました。
2010年が非常に素晴らしい仕上がりのヴィンテージだったので、良年らしい甘い香りが広がります。
香りは独特なハーブや八角のオリエンタルな芳香とチャーミングな赤果実系。樽の香りがかなり前面に出ています。
酸味、タンニンともにとても柔らかで、エレガントな雰囲気。

グラン・クリュのボンヌ・マールと比較するのは酷ですが、香りの広がり、構造の強さ、そして特に余韻には歴然とした違いがありました。
何よりも独特のハーブ系の香りと柔らかなボディに対し強すぎる樽香は、本来の葡萄が持つテロワールから由来するものではなく、後付けされた感じが拭えません。
同じくジュブレイで最近特に人気のあるドメーヌ・フーリエにも共通することですが、スタイリッシュで洗練されたワインを求める市場に原因があるのか、女性に例えると化粧やドレスアップは上手くても、それが人格に伴っていないように見えてしまうのは僕だけなのでしょうか。
しかし、これこそが精神性や知性よりも外見を重視するという、今の時代に合っているのは確かなのでしょう。

本質を重視するのが本物と言われた時代は既に失われ、左脳が支配する短略的な頭で考えるような人気の度合いや大衆の評価だけが支配する時代になってしまったのも間違いないようです。
ルイ・ジャドのジャック・ラルディエールのように、本質を追求する生産者が増えることを期待するのはもはや無意味なことは知っていましたが、専門家と言われる人たちがこのような安易なレベルへの方向性を与えてることに、強い違和感を感じています。
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|09:58:59|ワイン | comment(0) | trackback(0)